飛行機を使わずにシンガポールへ行ってきた。所要13日で、利用した交通手段は列車、船、バス、タクシー。
経由した国は韓国、中国、ラオス、タイ、マレーシア、シンガポールである。インターネットで多くの情報が
得られる時代ではあるが、船や列車のチケットは買えるのか、国境は越えられるのか、ネットの情報は正しい
のかなど、多くの不安を抱えての出発だった。

【提出用】★地図【PDF】行程表

カメリアラインで博多港出発

カメリアラインで博多港出発

出発は2025年1月4日、博多港から。カメリアラインに乗り約6時間で釜山港着、さらにKTX(韓国新幹線)と在来線を乗り継ぎ温陽温泉で1泊した。

韓国の朝食

韓国の朝食

翌日、温泉で入浴してピョンテク港へ行き、中国の威海港行きのフェリーに乗る。3万3千トン、定員880名の大型フェリーで、乗客は中国の地方部からの団体客が大多数だ。17時に出港。翌朝、9時頃に威海港着。船から街を見ると高層マンションが多い。

威海港から市街地を見る

威海港から市街地を見る

威海から中国高速鉄道(高鉄)で武漢へ行く。最高時速は300㎞でほぼ満員。座席のQRコードを読み取り、好みの料理をクリックすると温かい弁当を座席まで運んでくれる。料金もQRコード決済だ。回鍋肉弁当が美味しかった。

中国の新幹線車両が並ぶ巨大な武漢駅

中国の新幹線車両が並ぶ巨大な武漢駅

翌日は昆明へ移動し、中老(中国・ラオス)鉄路に乗り換えて雲南省最南端のシーサーパンナ(西双版納)へ行く。2日間で威海からシーサンパンナまで約3400㎞を移動したが、中国の高速鉄道網の発達には驚くばかりである。シーサーパンナ傣(タイ)族自治州という行政区名から少数民族が住む静かな街を想像していたが、実際には斬新なデザインの高層ビル、派手にライトアップされた建造物、そして何百もの店が営業する巨大なナイトマーケットがある賑やかな街でだった。

サソリやサナギなどの昆虫食(シーサーパンナのナイトマーケット)

サソリやサナギなどの昆虫食を売る(シーサーパンナのナイトマーケット)

昆明とビエンチャンを結ぶ中老鉄路 最高速度160㎞

昆明とビエンチャンを結ぶ中老鉄路 最高速度160㎞

シーサーパンナからラオスの古都ルアンパバーンへ行く列車は人気があり数日先まで満席だったが、キャンセルが出たのか幸運にも出発直前にチケットを買うことができた。最高時速160kmの快適な列車で中国からラオスへ移動する。ルアンパバーンはメコン川が流れる落ち着いた雰囲気の街で、仏教寺院が多く世界遺産に指定されている。早朝に仏僧が裸足で托鉢をしているが、中には小さな子供もいる。かってはフランス領だったのでフランス人観光客が多く、おしゃれなカフェやレストランもある。夜になるとメインストリートがナイトマーケットになり、多くの人で賑わっている。

旅行者で賑わうルアンパバーンのナイトマーケット

旅行者で賑わうルアンパバーンのナイトマーケット

朝の托鉢(ルアンパバーン)

朝の托鉢(ルアンパバーン)

ルアンパバーンから中老鉄路に乗り終点のビエンチャン駅へ行き、さらに駅から約20㎞先にあるタイ国境までタクシーで移動する。メコン川を渡りタイ側の街、ノンカーイで一泊。翌日、9時間かけて列車でバンコクに行く。3等車の座席はプラスチック製で直角。乗り心地は最悪である。

バンコクでは2泊して休養に努める。マレーシア国境に行く列車は夜行である。寝台車に乗りたかったのだが数日先まで満席とのこと。仕方なく再び3等車の直角座席で移動する。満員の夜行便はつらい。タイの列車は、運賃は安いが本数が少ない上に設備も良くない。

夜行列車の三等席でマレーシアをめざす

夜行列車の三等席でマレーシアをめざす

マレーシア国境から首都クアラ・ルンプルへ行く列車は新しくて快適だった。クアラ・ルンプルは多数の高層ビルが建っている大都会だ。

クアラ・ルンプルのホテル51階からの眺め

クアラ・ルンプルのホテル51階からの眺め

シンガポールへの移動はバスを利用した。本数が多くで便利である。3列シートのデラックスバスで、所要約5時間。シンガポールの物価は日本以上に高い。今回の旅ではホテル予約サイトを使って5000~6000円のホテルに泊まるようにしたが、シンガポールではカプセルホテルしか泊まれない。最低価格の約8000円のホテルに泊まったが、部屋は狭く、シャワーを浴びると便器がびしょ濡れになる最悪のホテルだった。

旅の最終目的地シンガポールにあるマーライオン

旅の最終目的地シンガポールにあるマーライオン

1月16日、巨大で豪華なシンガポール・チャンギ空港から飛行機で福岡に戻った。

今回の旅では、東アジアの経済成長、デジタル化を強く感じた。特に思ったのは、スマホがなければ個人旅行は困難だということだ。鉄道やホテルの予約、入国カードのオンライン申請、地図アプリでのルート検索、観光地情報収集など、スマホが手放せない。中国では小さな商店やタクシーでもアリペイなどのQRコード決済だ。便利な反面、電池切れや山間部では電波が届かないという問題もある。もう一つ感じたのは日本人旅行者の少なさだ。韓国語で話しかけられたことはあったが、日本人にはほとんど会わなかった。

インターネットで世界中の情報が手に入る時代ではあるが、現地に行って、見て、感じる好奇心をこれからも持ち続けて旅を楽しみたいと思っている。(終)